ディンプルキーとはどんな鍵?その防犯性の高さの理由や特徴を鍵屋が解説
この記事でわかること
- ディンプルキーの仕組み
- ディンプルキーはなぜ防犯性能が高いのか
- ディンプルキーの種類とランク
- ディンプルキーの強みやデメリット
- ディンプルキーの合鍵が作れるところ
記事監修者
名前:金城 甫(きんじょう はじめ)役職:マネージャー
これまで4,000件以上の鍵トラブルを解決してきたベテラン鍵職人。“お客様に寄り添った接客”をモットーに、日々現場に駆けつけている。
ディンプルキーは、従来の鍵とは異なる、特殊な形状を持つ鍵です。そのシリンダーは非常に複雑で、ピッキングや破壊が困難なつくりになっており、高い防犯性能を誇ります。
しかし、実際にディンプル錠というものがどんな構造になっているのか、なぜ複雑な構造だと防犯性能が高いのか、ということはあまり十分に説明されていません。
今回は、日本でのディンプルキー普及の歴史を見ながら、特徴や、どういったときにディンプルキーに交換すべきなのかなども説明していきます。
家を建ててから鍵を交換していない、集合住宅だが玄関の鍵がギザギザのタイプで不安、という方はぜひキーレスキューサービスにご相談ください。いまどき玄関はワンドア・ツーロックが基本ですが、そのうちのどちらかはディンプル錠である方が良いと言われています。キーレスキューサービスではご予約も可能です。気軽にお電話ください。
目次
ディンプルキーとは何か
ディンプルキーは、子鍵(鍵穴に挿し込む方の鍵)に鍵山がなく、表面に複数のくぼみ(dimple、ディンプル)がある鍵です。
もう少し細かい話をすると、ディンプル「キー」と呼ばれていることからもわかるように、子鍵(key、キー)の特徴に由来する鍵の名前です。
キーとディンプル錠
鍵の種類というものは、大抵シリンダー内の構造がどうなっているかで分別されていることが多いのですが、ディンプルキーは「子鍵に複数の凹み(ディンプル)がある」という子鍵側の特徴が主体になっています。
それだけ今までのものとは形状が違った、ということなのですが、子鍵側の特徴を主体に分別したことで、他のディンプル錠とは構造の違う美和ロックのPRシリンダーもディンプルシリンダーのひとつとして扱われています。
海外では「ディンプル錠」と言えばピンシリンダーの親戚であり、その原理もピンシリンダーと同じだと考えられています。しかし日本国内では美和ロックだけがロータリーディスクシリンダー(U9・UR)を更に複雑にした、ウェハータンブラー系のディンプルシリンダーを製造しています。
子鍵には他のディンプル錠同様、複数の凹みがありますので、シリンダー構造が他のディンプル錠とは違うことは子鍵からは全くわかりません。
また、ピンシリンダー系の構造ではありますが、子鍵の形が特殊なものも、日本固有の発展の特徴といえるかもしれません。堀商店のトライデントR、クラビスF22などのディンプル錠については後ほど詳しく説明します。
殆どのディンプルキーは鍵穴に子鍵を差し込んで、内部に設置されている複数のピンタンブラー(ピンの形をした部品)と鍵の形状が一致することによって解錠される仕組みになっていて、ピンシリンダー系の特徴をそのまま引き継いでいると言えます。
ただ、並ぶピンタンブラーの数と、その列数がピンシリンダー上の2倍、3倍の数になってしまいました。これに対応するには今までのようなギザギザでは不十分です。
そこで考えられたのが子鍵の「裏表側面すべてを使ってシアラインに揃える」方法で、それにベストだったのが凹みを切削する、という方法だったのでしょう。
ディンプルキーの仕組みと防犯性能
別の記事でも説明していますが、シリンダー錠というものは内筒(プラグ)と外筒に分かれており、障害物を意味する「タンブラー」が内筒の回転を邪魔している状態が鍵がかかっている状態です。これらを正しい形状の子鍵で正しい位置に移動させ、回転できるようにするのが鍵を開けるという作業です。
ピンシリンダーは文字通り、タンブラーが複数のピンで、1列に並んでいます。住宅用であればだいたい5〜7本のピンタンブラーが使用されます。
ピンシリンダー錠の子鍵には、鍵足の片側にしかギザギザの刻みがないですよね?要するに、ピンが1列に並んでいるだけだから、片方だけで良いわけです。
ディンプルキーはこの1列だったピンタンブラーの並びが2列以上になり、1列に存在するピンの数も常に5~6本はあります。
最もわかりやすい構造のWEST 916を見てみましょう。
このシリンダーは2列12本なので、各列に6本あることになります。ピン列の並び方は横一列で、縦型のキーウェイに正しい子鍵が入ると、その左右にピンがあたって開錠用のパターンを形成します。
これが2列だけでなく、4列、5列ともなると、上下斜めにピンが並んでいることになります。自然と子鍵が持つ開錠パターンも、膨大な数になるのが想像できるかと思います。
開錠パターンの数、いわゆる鍵違い数の多さが防犯性能の高さ、と言われるのは、このためです。開錠パターンが多ければ多いほど、子鍵側の模様は緻密で複製困難なものになるでしょう。
このように理論鍵違い数が多いほど、子鍵の切削は難しくなっていきます。僅かな深さの違いや大きさの違いで、まったく違う開錠パターンになってしまうからです。
ディンプルキーの種類とその特徴
ディンプルキーはピンの方向とピンの数が増えることで、一般的なシリンダー錠よりもはるかにピッキングに時間がかかる仕様になったことがわかりました。
しかし、実際にはディンプルキーシリンダーのなかでも様々なランクがあり、理論鍵違い数もかなりの差があります。
一般的に登録制になっていないシリンダー(V18のようにオプション扱いのものを含む)は、
- 鍵屋にて合鍵作成が可能
- ピン列は3列以下
であることが多く、ブランクキーも豊富に出回っていて、キーマシンの刃さえあれば合鍵の切削が可能なものが殆どです。
ピン列数 | ピン本数 | 理論鍵違い数 | 合鍵作成 | |
GOAL V18 | 3 | 18 | 120億 | 可 |
カバエース | 3 | 16 | 30億5000万 | 認定店で可 |
WEST 916 | 2 | 12 | 不明 | 可 |
WEST 917 | 3 | 20 | 2935億 | 可 |
シブタニ T20 | 3 | 20 | 2935億 | 可 |
ショウワ NX | 3 | 18? | 11兆 | 可 |
登録制のシリンダーはそれぞれのメーカーのハイエンドモデルであり、ドルマカバ社のカバスタープラスのように5列26ポジションで耐ピッキング性能10分以上、理論鍵違い数2兆通り以上、といったタイプが多いです。他に以下のような特徴があります。
- ピン列は3列以上、タンブラー20本以上
- 合鍵作成は不可。シリンダーの所持者が直接メーカーから純正キーを取り寄せることしかできない。
また、それぞれ何かしらの技術や意匠が知的財産権を獲得していることもあり、他社が合鍵を作成することができないシリンダーとなっています。
ピン列数 | ピン本数 | 理論鍵違い数 | 複製に必要なもの | |
GOAL Grand V | 5 | 24 | 1000兆2800億 | セキュリティIDナンバー、キーナンバー |
カバスタープラス | 5 | 26 | 2兆2000億 | 商品シリアルナンバー・鍵ナンバー・暗証番号のトリプル認証 |
WEST 941 | 5 | 32 | 25京6289兆 | キーナンバーのみでは不可。照らし合わせが必要。よくある質問を参照 |
ALPHA FB | 4 | 20 | 1,300億 | セキュリティID、キーナンバー |
これらのシリンダーは鍵屋含めどこでも合鍵を切削して作成することはできないため、メーカーにオーナー本人がオリジナルキーの追加を注文するしかありません。そもそもブランクキーが出回っていません。
3つ目の種類は、先述した子鍵が従来のフラットな形状ではなく円柱形であるタイプです。クラビスF22や堀商店のトライデントRが該当しますが、そもそも鍵穴が円形であるためにピッキングツールやバンプキーを入れることそのものが困難、というシリンダーです。
ピン列数 | ピン本数 | 理論鍵違い数 | 複製に必要なもの | |
シブタニ F22 | 5 | 22 | 5兆5000億 | ユーザーカード |
堀商店 トライデントR | 3 | 15 | 1400万 | 9桁の鍵番号。郵送・FAXのみ受付 注文書をDLして送る |
子鍵の複製もオーナー以外では難しく、ブランクキーも存在しませんのでそれぞれ代理店に問い合わせるなどした方が良いでしょう。
堀商店は発注のハードルが最も高く、注文書を公式サイトからDLしたのち、郵送かFAXのみ、となっています。ネットの合鍵専門店や代理店に相談した方が早いかもしれません。
ディンプルキーの強み
ディンプルキーの強みはまずその防犯性能にあります。ピッキングやバンピング対策、カム送り対策といった基本的な不正解錠方法に対応済みであることに加えて、シリンダーとして丈夫で長持ちするように素材が選ばれており、破壊開錠にも抵抗できるよう、焼入れ鋼でできた部品があちこちに散りばめてあります。
ですが、防犯性の他にも多くの利点がありますので、ディンプル錠にすべきか悩んでいる人はこういった要素も考慮してみてはいかがでしょうか。
登録制・非登録制や種類を選べる
ディンプルキーシリンダーには様々な特徴を持つものが多く、自分のニーズに合ったものを選ぶことができますし、登録制と非登録制の両方があり、セキュリティニーズに合わせて選択できます。
絶対に子鍵を複製されたくない人は、登録制のものを選択した方が良いでしょうし、ある程度の防犯性能はありつつも、子鍵を紛失したときなどに大きな痛手とならないシリンダーを考えているのでしたら、非登録制のシリンダーが良いでしょう。
頑丈な作りと耐久性
ディンプルキーシリンダーは耐鍵穴壊し性能が高いシリンダーですが、後発なだけあって素材的にも頑丈なのものが使用されており、塩害のことも考慮されて錆びにくく、耐腐食性の素材が使用されているため、長期間使用できます。
ただ、錆びにくい素材とはいえ、ディンプル錠はシリンダーの構造そのものが、ホコリや塵の蓄積に強くありません。定期的なメンテナンスは必ず必要、と心がけておきましょう。
ディンプルキーのデメリット
ディンプルキーには多くの利点がありますが、いくつかのデメリットも存在します。ディンプルキーに交換する際は、必ず頭に入れておいた方が良いことばかりですので、ぜひ覚えておいて下さい。
部品代や合鍵が高い
ディンプルキーシリンダーは厳選された素材を使用していたり、内部が非常に複雑だったりするため、一般的な鍵よりも高額です。
また、合鍵を作成する場合、非登録制のものであれば鍵屋で切削して貰うことができますが、それでもブランクキーなどが高いため、ディスクシリンダーやピンシリンダーのように数百円で作れるというわけではありません。
更に、メーカー発注しなくてはならない登録制のものに関しては、メーカーが直送してくれるものの、1ヶ月ほどの日数がかかることが多く、単価も合鍵同様、高額で1本3,000~5,500円くらいすると考えて下さい。
実際にはメーカーによってだいぶ異なりますが、心配な人は事前に調べておくと良いでしょう。
複雑な構造なので塵埃に弱い
先述したようにディンプルキーは精巧なつくりで、わずかな摩耗や塵埃の蓄積で回しづらい、硬いなどの不具合が出て使えなくなることがあります。
塩害地域や幹線道路の近くに家がある方は特に、定期的なお手入れが必要になりますので、登録制のものよりも少し構造が簡素なものを選択すると良いかもしれません。
似たような意味で美和ロックのPRシリンダーも11列11枚というディスクタンブラーがかなり入り組んだ構造となっているため、塩害や砂塵などに弱いようです。
堅牢すぎて鍵開けの方法が限られることがある
住宅用のディンプル錠は、鍵屋でもピッキングでの解錠はしません。時間をかければ開くものもあるかもしれませんが、鍵を紛失したなどの理由で開錠のご依頼を受けた場合、ドアスコープがついていればそこからオープナーでの開錠という方法を採ります。
しかし稀にドアにドアスコープやポスト口といった開口部分が全くないときもあり、窓の開錠もできない、となると破壊開錠しか手段がないということもあります。
ディンプル錠は、ピッキングやサムターン回しに強いうえ、ドリリングやホールソーによる鍵穴壊しにも時間がかかるように作られています。シリンダーのところどころに焼入れ鋼や超硬金属のパーツが入れられており、これらをうまくかわしながら破壊したとしても1時間以上かかることが殆どです。
また、破壊開錠になると鍵を壊してしまいますので、新しいシリンダーも必要になり、大変高額になってしまいがちです。堅牢なディンプル錠に交換するときは、鍵の紛失や締め出しに注意していかなくてはなりません。
ディンプルキーの合鍵作成と費用
ディンプルキーの合鍵作成には特別な設備が必要です。合鍵とはオリジナルキーを元にブランクキーをキーマシンで切削して作成する鍵を指します。
こちらでは合鍵作成に関する情報を紹介しますが、同時に登録制ディンプル錠の純正キー取寄せ方法もご紹介します。
ディンプルキーの合鍵を作成するには、ディンプルキー用の機械(キーマシン)、刃(ブレード)とオリジナルに近い形のブランクキーが必要です。
刻みキーであれば近くのホームセンターやリペアショップで数百円で作成できますが、これはブランクキーもたくさん出回っており、オリジナルキーから形を写しやすいからです。
刻みキーと比べてディンプルキーは素材となるブランクキーも高額で、作成には専用のキーマシンが必要になりますので、総じて刻みキーなどよりはだいぶ高額になることが多いです。
登録制は切削で作成できない
登録制のディンプルキーは、子鍵の形状などが特許や意匠で守られていることが多く、メーカーの許諾なしに合鍵を作成することができません。
要するに、ブランクキーも製造できないタイプになりますので、オリジナルキー、いわゆる純正キーの追加を取り寄せるしかありません。
また、それができるのもシリンダーの持ち主だけで、我々のような鍵屋でも代行手続きができない類となります。
非登録制は設備があれば合鍵作成が可能
非登録制のディンプルキー、あるいはセキュリティカードなどをオプションでつけることができるディンプルシリンダーは、設備を持つ鍵屋であれば合鍵を作成することができます。
鍵屋や合鍵屋が作成できるもののなかには特許の期限が切れたもの(ドルマカバ社カバスターネオ、美和ロックPRシリンダー)も含まれていますが、特許切れとはいえディンプルキー用のキーマシンがないと作成できないことに変わりはありません。
ホームセンターなどでは専用のキーマシンがないこともありますので、対応できる鍵のなかにディンプルキーが入っていない場合は、店舗型の鍵屋に出向くか、ミスター・ミニットやリアット!といった規模の大きなリペアショップなどを探してみると良いでしょう。
鍵の職人がいなくても、コンピュータキーマシンなどが置いてあるところでは美和ロックのU9からディンプルキーまで作成することができるようです。
刻みキーのなかでも切削が難しいと言われるU9で1000円前後、ディンプルキーやウェーブキーのほか、廃番になった美和ロックのマグネットキーなどはやはり合鍵でも3,000~4,000円近くかかるようです。
合鍵作成ができるところ
それでは具体的にディンプルキーの合鍵作成が可能な場所を紹介します。
キーマシンや刃を持っている鍵屋
ディンプルキーの合鍵作成には特殊なキーマシンと、ブレードが必要です。この機械を持っている鍵屋であれば、合鍵を作成することができます。
ネットの合鍵屋さん
インターネット上でもディンプルキーの合鍵作成を受け付けている業者があります。便利に利用できる反面、信頼性の確認が重要です。
最近、合鍵犯罪の際に利用されたことで有名になってしまったネットの合鍵屋さんですが、本当に鍵番号だけで発注できてしまうようなところは避けた方が良いでしょぅ。
出張専門の鍵屋
出張専門の鍵屋であれば、自宅まで来て貰い、合鍵を作成して貰うことができます。緊急時にも対応してくれるため、非常に便利です。
出動代であったり、弊社であれば軽作業料金8,800円に部品代(ブランクキー代)が必要になってしまいますので、かなり割高ではありますが、なかなか合鍵屋まで行けない方や、地方の方など、様々なお客様にご利用頂いています。
複数の難しい鍵の合鍵が必要だったりする場合や、交換のついででも合鍵作成のご依頼をお受けすることができます。
ディンプルキーに交換したいならキーレスキューサービス
ディンプルキーは、その高い防犯性能のため生活にセキュリティや安心を与えてくれるもののひとつと言えます。一方で、堅牢であるがために、子鍵を紛失したりシリンダーに不具合が出たときに困ってしまうのも確かで、今までの鍵とは違ってプロによる対応が必要なことが多いと言えます。
鍵屋目線では、ワンドア・ツーロックうちどちらかがディンプルキー、というのがバランスが良いかもしれません。
そしてディンプルキーに交換する目的にもよりますが、一般的なご家庭の玄関の主錠にということであれば、非登録制の3列20本くらいの構造のものが不具合も少なくて良いように思われますし、一方で女性の一人暮らしとなると、やはり複製が難しい登録制の鍵が良いか、と考えたりもします。
いずれにせよ、もしディンプルキーへの交換で悩むことがありましたら、ぜひキーレスキューサービスにご相談ください。鍵のプロとして、お客様のご要望やご予算、家族の規模など様々な要素を考慮したご提案を心がけております。
年中無休、24時間対応可能でご予約頂くことも可能です。ぜひ都合の良い日をお電話でお知らせください。