バンピングとは?ディンプルキーはバンピングに弱い?バンピングに強い鍵を紹介!

鍵はシリンダーの技術が進化することで防犯性能の向上が進んでいますが、不正解錠による被害がなくなったわけではありません。
今回は古くから有名な不正解錠の1つである「バンピング」の手法や、ピンシリンダー系の鍵における脆弱性について解説します。
防犯に対する新たな知識を得ることで、身の回りの安全や財産を守る対策を検討しましょう。
目次
バンピングとは

バンピングは、バンプキーという子鍵に似た工具を鍵穴に差し込み、衝撃を与えることで開錠する手法です。
この技法は解錠の痕跡をほとんど残さないという特徴を持っており、侵入されたことに気が付かないことが多いと言われています。
ただし、バンピングはシリンダーごとに対応するバンプキーが必要で、侵入犯がバンピングを実行するためには多くの鍵に適合したバンプキーを用意する必要があります。
バンピングの難易度はピッキングより低い

よく耳にするピッキングという手法は、細い棒状の特殊工具を鍵穴に差し込んで、シリンダー内部のピンを操作しながら開錠するというものです。
ピッキングは、豊富な知識と技術が必要で、習得には訓練を要します。
また、「特殊開錠用具の所持の禁止に関する法律(通称:ピッキング法)」によって鍵屋などの業者以外の人物がピッキングツールを所持、購入することは固く禁止されています。
それに対してバンピングは、バンプキーさえ入手できれば、誰でも簡単に鍵を開けることができるため、特殊な訓練や技術は必要ありません。
バンピングは実際に使われやすい?
特殊なテクニックを必要としないバンピングは、ピッキングと比べて誰でも簡単に行うことができます。
しかし、日本国内で使用されている錠前メーカーだけでも30社以上あるうえに、一般の住宅で使用されている50種類以上の鍵に対応する必要があるので、犯罪で使用されることはあまりないでしょう。
たとえ、下見に行って鍵の種類を特定しても、バンプキーを用意するには手間や長い時間を要するため、侵入窃盗に活用するとは考えにくいです。
このため、バンピングが国内で発生するケースは多くないとされています。
ただし、バンプキーの入手が容易であればバンピングが使用されるリスクも決して無いとは言えません。
痕跡を残さないバンピングは鍵のかけ忘れと間違われ、犯罪として認知されていない可能性もあります。
そのため、不正侵入対策がされていない古い錠前あるいは古い外国製シリンダーなど、バンプキーの入手が容易な鍵を使用している家は、バンピングの被害に遭う可能性があり危険です。
バンピングの仕組み

シリンダーは内筒と外筒で構成されており、施錠状態では何らかの形でタンブラー(障害物)が内筒から外筒にかけてひっかかっていることで内筒が回らない仕組みになっています。
バンピングは鍵穴にバンプキーと呼ばれる子鍵に似たブランクキーのようなものを差してハンマーなどで衝撃を加えること(英語でbumpはなにかをドンとぶつけるなど、衝撃を与えることを指します)によって、障害物のタンブラーが外筒へ一斉に移動し、内筒を回転できるようにします。
バンピングに弱い鍵
ここまで、バンピングについて解説しました。
では、どのような鍵が被害に遭いやすいのでしょうか?
以下よりご紹介していきます。
ピンシリンダー

ピンシリンダー錠は子鍵の片面にだけ鍵山があるタイプの鍵で、タンブラーが内筒から外筒にまたがる上下のピンによって構成されており、内筒と外筒の境目(シアライン)と上下のピンの境目が一致することで内筒が回転します。
内筒の回転を遮るタンブラーが複数本(5~7本)のピンで構成されているため、最もバンピングに弱いシリンダー錠です。
特に10年以上前の鍵はバンピングをはじめピッキングなどの不正解錠方法への対策が不十分ですので、交換がおすすめです。
ディンプル錠

ディンプル錠は、ピンシリンダーの構造を応用しているものが多いため、理論的にはバンピングに対して弱いと言えます。
ただ、ピンシリンダーが1列のピン配列であるのに対して、ディンプル錠は2列以上の構造になっており、ピンの数も増えていますので、これらを効率的に動かせるバンプキーを作成することは現実的ではないと考えられています。
バンピングに強い鍵
バンピングが鍵穴に挿入したものに衝撃を加えることでシリンダー内のタンブラーを移動させる手法であるため、基本的にタンブラーが「衝撃などで簡単に移動しない」タイプのシリンダーはバンピングが通用しにくいと言えます。
美和ロックPRシリンダー

美和ロックのPRシリンダーは、タンブラーをすべて同時に揃えないと鍵が回らない仕組みになっています。
美和ロックのシリンダー錠はドルマカバ社のOEM商品であるJNを除いて全てディスク型のタンブラーを使用するウェハータンブラー錠で、ピンのように衝撃で跳ね上がることがありません。
端的に構造を説明すると、ディスク状のタンブラーには切り欠きがあり、正しい子鍵が挿入されるとこの切り欠きにサイドバーと呼ばれる棒が移動して内筒が回転するようになるわけですが、バンピングでこのディスクの切り欠きを揃えることはできません。
特にPRシリンダーはディンプル錠としてピッキングやドリルでの鍵穴破壊にも対応しているため、防犯性能の高いシリンダーとなっています。
解錠方法のパターン数(鍵違い数)は約1000億通りあります。
美和ロックU9シリンダー

美和ロックU9シリンダーはロータリータンブラー(ロータリーディスクシリンダー)を採用しています。
先述のPRシリンダー同様、ピンタンブラー機構ではなくウェハータンブラー錠の一種であるためバンピングの手法では開錠できないだけでなく、耐ピッキング性にも優れています。
またU9シリンダーは他のシリンダーと比べて比較的安価で耐久性もあり、大変コストパフォーマンスの良いシリンダーです。
鍵違い数は約1億5千万通りあります。
ミネベアショウワ WX

WXシリンダーの特徴は、鍵違い数が最大2,800億通りという膨大な数であることと、自動車用に開発された構造である「サイドバー方式」を採用しているため、ピッキングやバンピングの原理が通用しないことです。
サイドバー方式とは、ウェーブキーの基本構造であり、シリンダー内部にサイドバーと呼ばれる細長い棒を配置することで内筒が回転しないようになっています。
正しい鍵をさした時にサイドバーが内筒側に移動することによって開錠する仕組みです。
原理的に美和ロックのディスク系シリンダー同様、WXシリンダーにもバンピングの手口は使えないほか、ピッキングに対しても防犯性能が高いです。
また、鍵穴にシャッターが付いているので、砂やホコリなどの異物の侵入や塩害などに強い構造となります。
堀商店 トライデントR

トライデントRシリンダーはピンの数が多いうえに鍵穴が丸いため、対応した精密なバンプキーを作成することができません。
また、鍵穴が円形だと従来の鍵穴とは違って子鍵のようなものを挿入しにくく、ピッキングが困難です。
そもそも子鍵の複製は堀商店やシブタニといった錠前メーカーにしかできないとされています。
シブタニ Clavis F22

堀商店との共同開発であるF22シリンダーも、小さな丸い形状の鍵穴であるため、子鍵の不正複製やバンプキー作成が困難です。
ディンプルキーのなかでも半円周上の5方向に配置したピンに対応するものは、不正コピーがほぼ不可能と言われています。
また、通常のキーと形状が異なるためキーパターンを読み取ることも困難でしょう。
アブロイ プロテック

アブロイのプロテックシリンダーもピンを使用しない構造であるため、バンピングが通用しないシリンダーです。シリンダー内部品としてスプリングを一切使用していないことでも有名で、特に寒さや悪天候に強いシリンダーです。
耐ピッキング性能は10分以上、耐鍵穴壊し性能は5分未満で、子鍵が5本付いてきます。
有効なバンピング対策

ここからは、バンピングによる被害に遭わないための有効な対策をいくつかご紹介します。
バンピングに強い鍵に交換する

バンピングを防ぐには、まず上記で紹介したようなバンピングに強い鍵に交換する方法があります。
特に、海外メーカーのピンシリンダーは、バンプキーが出回っている可能性があります。
イスラエル製の鍵であるマルティロックも、とにかく頑丈かつピッキングに対して強いということで、かつては防犯性が高い鍵として知られていました。
しかし、後になってバンピングに弱いということが発見され、バンプキーが世界中に出回ってしまいました。
海外製の鍵、特に古い鍵をずっと使っているという方は、今一度ご自宅の玄関鍵を確かめてみてください。
DIYに慣れている方でしたら鍵交換は自身でも行うこともできますが、交換用のシリンダー探しがなかなか煩雑です。
よくわからない、自信がないといった場合は鍵屋に依頼するのがおすすめです。
補助錠を取り付ける

ドアに補助錠などの鍵を増設して「ワンドア・ツーロック」にすることも、防犯性を高めるには有効な選択です。
1つのドアに2つ以上の鍵を取り付けて二重ロックにすることは、警察も推奨している定番の不正侵入対策です。
ワンドア・ツーロックにすることで、バンピングをしようとする侵入犯は2つの鍵に対応したバンプキーを準備する必要があり、ピッキングに至っては倍の時間がかかります。
侵入犯の約7割は侵入に5分以上かかると犯行を諦めるというデータもあるため、1つのドアに2つ以上の鍵をつけて鍵開けにかかる時間を増やすというのは理にかなっているのです。
また、古い鍵を使用している家の場合、鍵交換+鍵の追加を行うと高い費用が予想されるため、鍵交換はせずに既存の鍵をそのまま残して補助錠を取り付けることでコストパフォーマンスが良くなります。
電子錠に交換する

鍵穴のない電子錠であれば、少なくともバンピングやピッキングの被害を避けることができます。
また、子鍵を必要としないので不正複製の心配もありません。
ただ、電池切れや暗証番号の漏洩には注意しなければなりません。
電子錠によっては電池交換のタイミングを通知する機能が備わっている製品もあるので、定期的に交換するなどして気をつけた方が良いでしょう。
暗証番号は、推測されやすい番号などは避け、定期的に変更するなどの対策を講じれば安心です。
更に防犯性を求めるのであれば、暗証番号が変更できるものや鍵の利用者履歴が見られる電子錠がおすすめです。
また、電子錠に対応している錠前であればドアの加工や配線工事をせずに取り付けることができますが、対応していない場合は対応している錠前に交換する必要があります。
イージスゲート

テンキー式のタッチパネルによる暗証番号だけでなく、SuicaなどのICカードにも対応している製品です。
他社製品よりも機能面は劣りますが、住宅向けの電子錠としては充分であり、その分、製品価格が安価に抑えられています。
Flassa1J

エピックから発売されているFlassa1Jはテンキー式のタッチパネルによる暗証番号や指紋認証、専用アプリなどの解錠方法があります。
また、別売りのハブブリッジを使用することで、外出中でも鍵の解施錠が可能です。
他にも簡単なボタン操作で解錠できるリモコンもありますので、お子様や年配の方でも使いやすいです。
鍵交換・鍵の取り付けならキーレスキューサービスにお任せ!
鍵交換や鍵の取り付けは、ホームセンターなどで鍵を購入してきてドライバーなどの工具を使い、自力で行うことで費用を安く抑えることができます。
しかし、ドアの採寸がしっかり行えていなかったり、鍵の規格を間違えたりと失敗するリスクも伴います。
特に鍵は、防犯上の観点から一度購入した製品は返品することが不可能です。
そのため、製品選びに失敗すると余計な費用がかかってしまいます。
また、鍵は正しく取り付けないと本来の性能を発揮できないため、防犯性を重視したい場合は鍵屋に依頼して交換してもらうことをおすすめします。
自力での作業に自信のない方は、ぜひキーレスキューサービスにお任せください。