ディスクシリンダーはピッキングに弱いって本当?特徴や対策、ピッキングについても解説
自宅の大切な財産や家族を守るために重要なのが玄関鍵です。
警察庁のデータによると、令和4年度、1日あたり約43件の住宅が侵入窃盗の被害に遭っています。
その中でも空き巣被害が最も多く、全体の約1/3を占めます。
この統計から分かる通り、侵入窃盗の被害は後を絶たず、普段から施錠のし忘れには気をつける必要があるということです。
しかし、鍵をかけているからといって必ずしも安心とは限りません。
鍵の中には防犯性があまり高くないものもあり、侵入窃盗の原因になってしまいます。
特にディスクシリンダーなどの古い鍵は、防犯性が低く、泥棒に狙われてしまう可能性が高いことで知られています。
本記事では、ディスクシリンダーの防犯性について詳しく解説していきます。
また、記事を読んで、ご自宅の鍵の交換を検討しようと思った方は、ぜひ鍵屋へご連絡ください。
目次
ディスクシリンダーとはどんな鍵?
鍵にはさまざまな種類がありますが、なかでもディスクシリンダーは普及率の高い鍵です。
しかし、ディスクシリンダーには大きな欠点があることをご存知でしょうか?
ここからは、ディスクシリンダーについて詳しく解説します。
ディスクシリンダーの特徴・見分け方
ディスクシリンダーは、大手鍵メーカーである美和ロックが製造した鍵です。
国内では1957年代から販売され、当時ブームになっていた公団住居に採用されたのがきっかけで広まりました。
1970年にもっとも多く流通したほか、日本全国の一戸建てやマンション・アパートなど多くの住宅で普及し、今でも古い集合住宅ではディスクシリンダーが残っている場所があります。
ディスクシリンダーは、鍵穴は縦向きで「く」の字になっており、子鍵には非対称のギザギザした山が両端にあるのが特徴です。
見分ける際に参考にしてください。
子鍵のヘッドは丸みを帯びていて、純正のものにはヘッドの部分に「MIWA」のロゴがマークされており、合鍵には「48」というロゴがマークされています。
ディスクシリンダーの構造
ディスクシリンダー錠(ウェハータンブラー錠)はシリンダーの内筒の回転を阻む障害物(タンブラー)がディスク状であることからこう呼ばれています。
切り欠きや穴が設けられたディスク状のタンブラーはウェハーとも呼ばれ、これが英語でウェハータンブラー錠と呼ばれる所以です。
ディスクタンブラーは円盤に近い形をしていることが特徴です。
子鍵を挿入するとディスクタンブラーが動き、内筒と外筒の境界線(シアライン)に揃います。
この状態ですと、外筒に干渉しているディスクタンブラーが無くなるので内筒が回転します。
同時に、子鍵の鍵足の先がテールピースの代わりとなって閂を錠ケース内へと引き込み、ドアを開けることができるようになります。
ディスクシリンダーのメリット
ディスクシリンダーはタンブラーが板状のディスクで、構造も単純なシリンダーであるため、安価で大量生産がしやすい、というメリットがありました。
戦後急速に広まった都市開発や公団住宅では円筒錠などの「シリンドリカル・ロック」あるいは「キー・イン・ノブ」が広まっていきましたが、多くの物件で美和ロックが採用された背景には、ディスクシリンダーのコスト面でのメリットもあったのだろうと考えられます。
現在では脆弱性のあるシリンダーとして有名ですが、ディスクシリンダー以前のレバータンブラー錠に比べて飛躍的に防犯性の高いシリンダーでした。
また、単純なつくりですので、埃や塵の蓄積に弱いディンプルシリンダーとは違って「長生き」するシリンダーでもあります。
未だに古いディスクシリンダーが使用されているのは、複雑な構造を持たないからでしょう。
ディスクシリンダーはピッキングに弱いって本当?
ディスクシリンダーの長所は、構造がシンプルなことですが、構造の単純さは裏を返せば「ピッキングがしやすい」ということでもあります。
事実として、1990年代後半にはディスクシリンダーを狙ったピッキングの被害が急増し、ディスクシリンダーがピッキングに対して脆弱な鍵であると世間に認識されるきっかけとなりました。
これは、少し勉強した初心者でも道具さえ揃っていれば簡単にピッキングできることや、日本全国でディスクシリンダーの普及率が高かったことから、外国からやってきた窃盗団と解錠技術に詳しい日本人が結託して組織的にピッキングによる犯行を繰り返したことが被害急増の原因と言えます。
ピッキングとは?
ピッキングとは、特殊な工具を鍵穴に入れて操作し、子鍵を使用することなく解錠する方法です。
侵入窃盗の犯行手口として知られていますが、鍵屋などが解錠作業としておこなう場合は犯罪には問われません。
そのため、通販でピッキングツールが販売されていますが、業者でもない一般の方が所持していることはピッキング防止法違反となり、1年以下の懲役もしくは、50万円以下の罰金が課されます。
また、業者以外の一般人に販売した場合も2年以下の懲役または100万円以下の罰金が課されます。
ピッキング防止法とは?
ピッキング防止法は、正式には「特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律」と言い、侵入犯罪を未然に防止するため、2003年6月に制定されました。
内容は、特殊開錠用具の所持・指定侵入工具の隠匿携帯を禁止したものとなっており、簡単に言うと、鍵屋などの業者以外が開錠のための特殊な工具や特定の工具を隠し持つことを禁止するというものです。
ピッキングツールなどの特殊な工具だけでなく、マイナスドライバーの所持で違反となり逮捕された事例もあります。
指定侵入工具の隠匿携帯に該当したケースですが、窃盗などを行う意図で特定の工具を隠して持ち歩くことが禁止されています。
具体的には、15センチ以上の長さで先端の幅が0.5センチ以上のマイナスドライバーが対象となっています。
製造の廃止が進んでいる
現代のピッキング技術であれば容易に解錠されてしまうディスクシリンダーは、メリットよりもデメリットの方が大きいと言えます。
こうしたピッキング被害の急増や、さらに高い防犯性の鍵が求められるようになったことから美和ロックは2001年にディスクシリンダーの製造中止を発表しました。
ディスクシリンダーは数多く生産されたことから、鍵違い数が限界に達したことも理由としています。
- 鍵違い数とは、鍵のパターン数を表しており、シリンダー内のタンブラーの数や配置を増やすことで、鍵違い数が増え、防犯性を高めることにつながります。
バンピングには強い
ピッキングには弱いディスクシリンダーですが、バンピングには強いという特徴があります。
バンピングとは、バンプキーと呼ばれる工具を鍵穴に差し込み、ハンマーなどで衝撃を加えることによって開錠する方法です。
バンピングはピッキングほど高度な技術が必要なく、時間もかからないため、子供でも解錠できると一時期大きな話題になりました。
また、ピンシリンダー錠のシェアが大きいアメリカでは被害が大きかったのかもしれません。
ピンシリンダー錠は、鍵を差し込んだときにシリンダー内にある上下のピンタンブラーの高さをシアラインに合わせると解錠されるという仕組みです。
バンピングは、バンプキーをシリンダーに差し込んで叩くことで下側のピンに衝撃を与え、上側にピンだけを弾き飛ばして内筒を回せるようにする解錠方法です。
ディスクシリンダーのように、内筒と外筒にまたがるタンブラー(障害物)が板状のディスクである場合は衝撃を与えて弾き飛ばすピンがないので、バンピングは構造的に無意味でした。
そのせいもあってか、日本国内ではピッキングによる被害ほど大きな社会的反響がなかったと言えます。
ロータリーディスクシリンダーとの違いとは?
ロータリーディスクシリンダーとは、ディスクシリンダーが進化したもので、ピッキングなどに対応した後継の鍵です。
子鍵の見た目はディスクシリンダーとあまり変わらず、両方の側面がギザギザしています。
内部構造も複数枚のディスクにロッキングバーと呼ばれる一本の棒状の部品が追加された、ディスクシリンダーに類似したものになっています。
しかし、ロータリーディスクシリンダーではロッキングバーそのものが内筒の回転を阻んでいます。
子鍵を差し込んで、ディスクの切り欠きが正しく揃うとロッキングバーが切り欠きへと退いて内筒に収まります。
ロッキングバーが切り欠きへと移動してはじめて内筒を回転させることができるようになる、という仕組みです。
ロータリーディスクシリンダーは、全てのディスクを正しく揃える必要があるため、ピッキングしたとしても切り欠きが正しい位置に揃ったかを掴むのが非常に難しいと言われています。
特に最近のモデルでは全部のディスクタンブラーに複数のダミーの切り欠きが加えられ、ピッキングで解錠するのが非常に困難なシリンダーとなっています。
ディスクシリンダーの販売中止に伴い、後継品として開発した初期型U9シリンダーは、耐ピッキング性能は従来より向上していたものの、ドライバー1本で簡単に破壊されてしまうという欠点がありました。
使用年数が長いU9シリンダーは、交換などの対策をおすすめします(現在販売されているもの対策済み)。
玄関の鍵がディスクシリンダーだったらどうすべきか
ここまで、ディスクシリンダーの特徴や防犯性が低い理由についてご紹介しました。
自宅の玄関鍵がディスクシリンダーだった場合は、以下の対策を検討すべきでしょう。
ワンドア・ツーロックにする
ワンドア・ツーロックとは二重ロックとも言い、文字通りひとつのドアにふたつの錠前を取り付けることを言います。
空き巣などの侵入窃盗を防ぐ対策として、警察や国土交通省も推奨しており、鍵を複数設置することで、ピッキングやシリンダー破壊などに時間がかかるので、侵入犯から狙われにくくなります。
また、それぞれ異なった種類の鍵を設置することで、さらに防犯性能を高めることができます。
内鍵をつける
内鍵とは、内側からしか施錠できない錠前です。
ドアの外側から開けることが難しく、侵入に対して時間稼ぎができます。
侵入犯は開錠に時間がかかることを嫌うため、開錠に手間がかりやすい内鍵があるだけでも牽制になります。
しかし、内鍵は室内側からしか操作ができないため、締め出しにあってしまう可能性もあります。
玄関ではなく、勝手口などの侵入対策として適切です。
交換を検討するのがおすすめ
防犯性の低い鍵をいつまでも利用していると、空き巣に狙われるリスクが高まります。二重ロックや内鍵などの対策もありますが、一番は防犯性の高いシリンダーに交換してしまうのがもっとも確実です。
鍵の耐用年数は約10年と言われており、古くから使用されている鍵の場合、経年劣化が進んでいるものも多いでしょう。
最近では強盗が住人を襲うなど、恐ろしい事件も頻発しています。
防犯性能の高いシリンダーを玄関に設置し、防犯対策をしていることをアピールすれば、視覚的にも犯罪を抑止する効果があります。
鍵交換はプロの鍵屋に任せれば安心
防犯性の低い鍵を使用している場合は、早めの交換をおすすめします。
「自力での交換が不安」「時間がない」「すぐに対応して欲しい」という場合は、プロに依頼することをおすすめします。
鍵屋のキーレスキューサービスであれば、週末の対応も可能で、スピーディーな作業をおこなってくれるので、時間に余裕がない方でも安心です。
また、DIYに慣れていない方が自力で鍵交換をしてしまうと、施工不良でドアが使えなくなってしまったり、本来の防犯性がうまく発揮されない可能性もあります。
そんな事態を避けるためにも鍵の交換はプロに任せるのが良いでしょう。
鍵を交換するだけではなく、ご自宅のドアに合った鍵を提案することや、車載在庫から数種類の商品を持ってくることも可能です。
鍵屋に鍵交換を依頼した場合の料金相場
状況によって必要な工事が異なるため、鍵交換にかかる費用は各業者によってばらつきがあります。
また、防犯性が高いシリンダーであればあるほど部品代も高価であるため、交換する鍵の種類によっても金額は大きく変動するということを理解しましょう。
目安としては、ロータリーディスクシリンダーの交換費用の相場は作業費¥11,000円~+部品代¥20,900円~になります。
また、構造が複雑なディンプルキーの交換費用の相場は、作業費¥11,000円~+部品代¥27,500円~になります。
鍵屋に依頼する場合は、複数の業者から見積もりをとって比較することで、少しでも費用を抑えることが可能です。
同じ状況、同じ要望で作成された見積書を比較した方が、ご自身にとっての適正な金額がわかりやすくなります。
業者や地域によっては「出張料金」がかかることもあるので、出張料金がかからない鍵屋を選ぶこともポイントです。
早めの鍵交換で防犯対策を万全に!
ここまで、ディスクシリンダーのことについてご紹介してまいりました。
ディスクシリンダーは、構造がシンプルなため、低コストで大量に生産されました。
かつては全国的に普及していましたが、ピッキング被害が相次いだことなどで現在では廃番になっているという事情を解説しました。
ディスクシリンダーの開錠技術や開錠工具はすでに広まっています。
メーカーもその点は認めており、別のシリンダーへの交換を推奨していますので早急な対策が必要です。
鍵交換はもっとも有効な手段であり、ピッキング対策済みの美和ロックU9シリンダーや防犯性が高いディンプルキーへ交換することが望ましいでしょう。
「自宅の玄関、勝手口を調べたらディスクシリンダーだった」
「すぐに交換を検討している」
という場合は、ぜひ鍵屋のキーレスキューサービスへご相談ください。